AR15の特徴的なシステム


図では、ボルトが回転して閉鎖解除される動作は省略しています。あくまでも、ガス圧がボルト・キャリアを後退させる
プロセスだけ注目してください。

イラスト中段にて、グレーの矢印はガスの流入と膨張を表します。赤矢印はボルト・キャリアーの後退を指しますが、ガス
圧がキャリアーを真後ろに押している点に注目してください。これがAR15システムの特徴の一つで、後にガス・ピストン
式に改装されたクローンでは、この「真後ろにキャリアーを押す構造」がキャンセルされてしまった為、キャリアーを傾ける
力が働いて、レシーバーが偏摩耗するトラブルが起こったようです(話が逸れました。これは余談です)。

AR15で特徴的なのは、ガス・チューブから取り込んだガスを、一旦大きなガス・チャンバーに導き、広い面積を用いて、
ボルト・キャリアーを後退させている点にあります。質問では、この部分がシリンダーとピストンに似ている点を重視してい
ましたが、高圧ガスを密室に閉じ込めた上で膨張させ、動き得るパーツを動かすという点では、MAS49やAG42も同じ
なのです。つまり・・・↓







AG42やMAS49では

下図は、ピストンに似た部分の機能をバッサリ削除し、AG42やMAS49と同じように、ガス・チューブ端で作用するように
描いてみました。(実際のAG42やMAS49は、パーツ形状や閉鎖方式などが異なります)

お分かりいただけますか?ガス・チューブとキャリアーの受け口を”注射器”に見立てれば、ピストンとシリンダーの関係には違い
ないのです。AR15が異なるのは、その径が大きく、容積も広い点のみです。また、先の図説でもチラと出ましたが、ボルト・キャ
リアーを真後ろに押すという点も特徴です。上の図では、キャリアーを押す力(入力点)は、キャリアーの中心線からズレています。
これは、多くのガス・ピストン式でも同じです。







誤解を招き易い呼称

日本では、これらの方式を「直噴式」などと呼び、その説明に「〜ガスを直接吹き付け〜」と言った記述が見られますが、私は同
感しません。この表現ですと、何か噴射によってのみ、動力を得ている印象を受けるからです。例えば↓の図のように。

リュングマン式やダイレクト・ガス・インピンジメント式を、このように誤解している、或いは誤解していた人も居るのではないで
しょうか?「インピンジメント」ってのも、「衝突」の意味ですから、あまり適当ではない気がします。「ガスをボルト付近まで導い
ている」点を表す言葉が適当と思いますけど・・・私がここで言っても仕方ないので止め。








では何故、AR15は大容量の拡張室を設けたのか?

一見、特殊に見えるAR15のピストン形状ボルトですが、ガスを閉じ込めた状態から膨張させるのは、AG42やMAS49も同じ
であり、異なる点は、ガス膨張に用いる容積がAR15では大きいという事は、既に述べました。では、その構造は一体何を求め
た結果なのか?

あくまでも私見なのですが、必要だったのは大容量ではなく、ガスを受ける面積を広くしたかったのだと思います。つまり、パス
カルの原理ってやつです。自動車のブレーキなどでお馴染みですね。バレルのガス・ポートやガス・チューブの径に対し、ガス
を受ける部分(ボルト後部)の面積が広ければ、より強い後退力を得る事ができます。正確には、スピードを犠牲にして、力を得
る事になり、これは自動車の変速機をトップ・ギアからロー・ギアに落とす事に例えられると思います。

AR15は、7つのロッキング・ラグが噛み合う、マイクロ・ロッキングラグを採用しており、恐らくこれの解除に、安定した強い力を
必要とした為と推察します。或いは、5.56×45mm弾の腔圧やガス量が不足したとも考えられますが、ARには7.62mmの
モデルも同じシステムで存在するので、その線は薄いと思います。

もう一つ考えられるのは、このページでも既に何度も話が出ましたが、ボルト・キャリアーを真後ろに後退させるため。ガス・チュ
ーブ端で拡張させると、キャリアーには偏った力が加わりますからね。勿論、AG42やMAS49では、それを考慮に入れたデザ
インが成されているので問題ありません。AR15の場合、それが難しかったのかもしれません。

↑リングは含まず、直径12.1mmですね。AG42やMAS49のガス拡張部分の直径は、見た感じで8〜10mmくらいかな?



余談ですが、AR15の開発者であるストーナーが取得した初期の特許では、ボルト・キャリアーが後退する段階で、その動きに
合わせて、ガス導入穴が塞がり、ガスの流入圧を自ら調節する機能が備わっているのです。これはM14ライフルでも採用され
ており、セルフ・ガス・カットオフなどと呼ばれています。ところが完成品では無くなっているんですよね。どうして要らなくなったの
だろう?まあ、結果的に無くても問題ありませんけどね。逆に、存在するとどうなるのか?大変興味深いです。








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